藤沢市にある辻堂脳神経・脊椎クリニックのホームページへようこそ、院長の中川です。
「物忘れや認知症は治らないので病院に受診しても意味がない」、「認知症と診断されるのが怖いので受診しない」そのようにお考えの方は多いのではないでしょうか?しかし認知症には治る認知症もありますし、認知症の進行を遅らせる治療も存在します。また複数の臨床試験が進行しており、近い将来には治療が可能となることも期待されます。
明らかになっている認知症の危険因子は改善できるものが多く、発症する前から予防に取り組んでいくことは非常に重要です。また発症後も進行を遅らせるためにも早期の改善が勧められます。
このページでは物忘れや認知症に関して解説し、受診が勧められる症状や特徴についても説明していきます。認知症が心配な方、また自分の家族や身近な人が「認知症なのではないか?」と心配をしている方は是非とも読んでください。
物忘れと認知症
「物の名前が出てこない」「昨日なにを食べたか思い出せない」「人の名前を忘れてしまった」などの物忘れは誰しも経験することと思います。この物忘れは認知症とどのような関係があるのでしょうか?
認知症とは一度獲得した知能が低下してしまい、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態です。物忘れは記憶障害であり認知症の症状の1つです。物忘れが増え始めたら、それは認知症の始まりなのでしょうか?
物忘れは認知症ではなくても加齢とともに増加しますので、物忘れが増加したからといって認知症とは言えません。しかし物忘れの仕方には違いがあります。加齢に伴う物忘れの場合は、物の名前が思い出せないけれどヒントをもらうと思い出せたり、朝食の内容が思い出せないけれど朝食を食べたことは覚えています。しかし認知症の物忘れではヒントを提示されても物の名前を思い出せなかったり、朝食を食べたこと自体を忘れていたりします。これはあくまで1例であり、なかなかご自身やご家族様が見分けるのは難しいことも多いので、物忘れが増えてきた場合はお早めにご相談ください。
認知症の代表的な症状の1つに物忘れがあります。認知症の50%以上を占めるアルツハイマー病では物忘れが初期症状として現れやすいです。そのため「物忘れ=認知症」というイメージが定着していますが、認知症には他にも複数の症状が現れることがあります。
また通常の病気では痛みや発熱、咳、違和感など自身が感じる自覚症状が医療機関に受診するきっかけとなることがほとんどだと思いますが、認知症の場合はやや異なります。物忘れを心配して受診される方もいらっしゃいますが、ご家族が本人の変化に気づき心配して受診することが多いのです。ご家族が気付きやすい認知症の症状としては以下のようなものがあります。
- 同じことを言ったり聞いたりする
- 置き忘れやしまい忘れが目立つようになった
- 蛇口やガス栓の閉め忘れが目立つようになった
- 時間や場所の感覚が不確かになった
- 散歩や趣味などの日課をしなくなった
- 以前はあった関心や興味が失われた
- だらしなくなった
- 財布を盗まれたという
- 些細なことで怒りっぽくなった
このような症状が認められる場合は、お早めにご相談ください。
認知症の原因
認知症とは前述のとおり知能が低下し、日常生活に支障をきたす状態です。知能を低下させる原因、つまり認知症の原因疾患は数多くあります。また認知症と紛らわしい症状を呈する疾患もあります。またそれぞれの疾患により早期に出現する症状が異なることもあり、認知症なのに物忘れが目立たないものもあります。
これらの中には治療により症状が改善する「治る認知症」もあり、また早期からの治療介入により症状の進行を遅らせることも可能であるため症状にお気づきの場合は早めにご相談ください。
認知症の代表的な原因疾患で、認知症の方の5割以上の方はアルツハイマー型認知症です。アミロイドβとタウという異常タンパク質が脳に溜まることが原因です。
アルツハイマー型認知症では海馬や側頭葉、頭頂葉が障害されやすいので症状としては記憶障害が中核であり、その中でもエピソード記憶障害が早期から認められます。人との約束を忘れたり、鍵や財布の置き場所が分からなくなったり、話したことを忘れて何度も同じ話を繰り返したりします。また頭頂葉の障害により段取りが悪くなる「遂行機能障害」を認めたり、「視空間認知障害」により車をこするなどの症状が認められることがあります。これらが進行すると道に迷ったり、いつもの仕事や家事ができないと日常生活に支障をきたすようになります。
症状や経過に加えて、各種検査により他の疾患を除外することで診断します。最近ではアルツハイマー型認知症で脳に蓄積する異常タンパク質であるアミロイドβ42やタウを検出することで診断する試みが研究されています。
またアミロイドβ42を除去し、認知症の進行を止める治療薬として「アデュカヌマブ」や「レカネマブ」といった薬剤の臨床試験が行われています。
認知症の15〜20%を占めるのがレビー小体型認知症です。αシヌクレインという異常タンパク質が蓄積します。
病初期には記憶障害が目立たないこともある認知症です。アルツハイマー型認知症でも認められた遂行機能障害や視空間認知障害などの障害に加えて、注意障害や幻視、嗅覚異常、うつなど多彩な症状が認められます。幻視では人の幻覚を見ることが多く、壁の木目が人の顔に見えたり、静止しているカーテンが揺れて見えるなどの錯視も伴うことがあります。
パーキンソン病以外の原因によりパーキンソン病の症状が出現するパーキンソニズムを認めることもあります。手が震える「振戦」や筋肉のこわばりである「筋強剛」が出現したり、動作が緩慢となり、バランスや歩行の問題が出現することもあります。
またレム睡眠行動異常もレビー小体型認知症に認められる中核症状の1つです。悪夢により寝言を叫んだり、激しく手足を動かすような動作が見受けられ、結果としてご自身やベッドパートナーを傷つけてしまうこともあります。
進行すると記憶障害も伴うようになります。記憶障害が認められる前から出現する代表的な症状は以下のとおりです。
- 便秘
- 睡眠障害
- 抑うつ
- レム睡眠行動異常
- 起立性めまい
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因となる認知症で、認知症の10〜15%程度を占めます。
ゆっくりと徐々に進行するアルツハイマー型認知症と異なり、突然発症したり悪くなったりします。また病識や判断力はアルツハイマー型認知症と比較すると保たれやすいです。脳卒中を起こした方の約2割は認知症となります。
行動障害型前頭側頭型認知症、意味性認知症、進行性非流暢性失語症という3つの疾患が含まれ、認知症の5〜10%を占めます。タウやTDP-43という異常タンパク質が蓄積し、前頭葉や側頭葉が主に障害される認知症です。
早期には物忘れ症状は目立たちません。他人への接触や公共の場で裸体になったり放尿をしたりと社会的に不適当な行動やマナーの欠如、また危険運転や窃盗などの衝動的で不注意な行動が認められたりします。また用を足すわけではないのに何度もトイレに行ったり、固定ルートを歩く、集めたり買いだめしたりと強迫的または儀式的な行動も現れます。
そのほかにもものすごく無気力・無関心となったり、食事の嗜好が変化したり過度に食べすぎたりするようになることもあります。
行動障害型前頭側頭型認知症と意味性認知症は難病指定されています。
上記のような中枢神経変性疾患や脳血管障害による脳の障害以外にも認知症を呈する疾患は数多く存在します。認知症が急激に進んだと思いご家族に連れられて受診をしてみたら脳腫瘍が見つかることなども経験されます。このような場合は早急な治療が必要となりますが、認知症の症状が改善することも多々経験されます。
また比較的頻度の多い疾患として正常圧水頭症と慢性硬膜下血腫があります。この2つの疾患は手術により認知症が改善するため「治る認知症」の代表です。
さらに脳と一見関係がないような疾患でも認知症のような症状が出現することがあります。
内分泌機能異常症
甲状腺や副腎、甲状腺といったホルモンを分泌する臓器の機能異常によっても認知症のような症状が出現することがあります。多くの場合、治療により認知症状の軽快・改善が期待できます。
栄養素の欠乏
ビタミンB1やB12、葉酸などの欠乏により認知症を発症することがあり、注意が必要です。
薬物誘発性
向精神薬と呼ばれる薬剤により認知症のような症状を呈することがあります。また脳とは関係がなさそうに感じる、抗がん剤や抗菌薬などの薬剤でも認知症の症状が出現することがあります。また排尿機能改善のために処方されやすい抗コリン薬は認知症の症状を起こしたり悪化させることがある代表的な薬剤です。その他にもアレルギーの薬である抗ヒスタミン薬や抗てんかん薬でも薬物誘発性に認知症の症状を呈することがあります。
またコーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインや栄養ドリンクに含まれることのあるブロモバレリル尿素などでも認知症の症状を呈したり、悪化させたりします。認知症の疑いで受診された方のお宅から大量の栄養ドリンクの空き瓶が見つることなどがしばしばありますので、ご家族様はご注意ください。
これらの薬物誘発性の場合は薬剤の調整や中止によって症状の改善が期待できます。
神経感染症
髄膜炎や脳炎などに加えて梅毒やHIVなどの感染症により認知症の症状を呈することがあります。
これらは代表的な認知症を呈する疾患の例であり、この他にも数多くの疾患が認知症の原因疾患として存在します。疾患により当然治療は異なりますので、認知症を心配したり、疑われた場合はお気軽にご相談ください。
当院での診療
問診
ご本人様・ご家族様から症状の経過を聴かせていただきます
診察
神経症状を含めた全身の診察をさせていただきます
知能検査
まずは簡易的な知能検査を施行させていただきます
血液検査
認知症の原因疾患を鑑別するために必要な血液検査を行います
画像検査
脳血管障害や脳腫瘍、脳萎縮などの評価を行います
治療
認知症に対する予防療法や治療を行います
当院では日本脳神経外科学会専門医/指導医である院長が診断・治療を行っており、ドクターが交代することなく責任を持って長い経過を診療させていただきます。お気軽に相談いただけるクリニックですので、心配がありましたら、いつでもいらしてください。