片頭痛持ちの方には頭痛の始まる前から予兆を感じる患者さんがいます。片頭痛発作には予兆期、前兆期、頭痛期、回復期の4つの病期があり、今回はこの予兆期に出現する症状の特徴やその頭痛予測の精度、また片頭痛の予兆早期から始める新たな治療の可能性について、最新のデータをもとに徹底解説します。

辻堂脳神経・脊椎クリニック 院長
中川 祐
なかがわ ゆう
慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院、済生会横浜市東部病院、横浜市立市民病院、済生会宇都宮病院、足利赤十字病院、日野市立病院にて勤務後、辻堂脳神経・脊椎クリニックを開院。 脳神経外科専門医・指導医 脳神経血管内治療専門医
片頭痛における4つの病期|予兆期・前兆期・頭痛期・回復期
片頭痛発作は最大で以下の4つの段階からなります。
予兆期
片頭痛の初期段階であり、頭痛の1〜72時間前に現れる症状です。
前兆期
頭痛発作の5〜60分前や頭痛の最中に起こる一時的な局所神経症状の複合体です。
頭痛期
片頭痛の主症状である痛みの段階です。
回復期
頭痛後に続く回復期の症状です。
予兆期、前兆期、頭痛期、回復期を含めると7日間続くことがあります。このうち頭痛発作の1〜72時間前に認められる予兆期は片頭痛患者さんの最大80%で認めれます。
予兆期の症状にはどのようなものがあるのか?

光過敏

疲労

頚部痛

音過敏

集中力低下
思考困難

めまい

イライラ

吐き気
予兆を感じる片頭痛患者さんの約半数が5つ以上の異なる予兆を感じることが報告されています
予兆から頭痛の発症まではどのくらいの時間がかかるのか?
- 1〜 6時間 81.5%
- 6〜24時間 4.5%
- 24時間以上 0.8%

予兆後およそ6時間以内に片頭痛が起こることが多いことが示されました
予兆による片頭痛の予測精度
非常に高い
片頭痛患者さんが頭痛が起こる可能性が「非常に高い」と感じた場合には85%の精度で頭痛が認められました。
ほぼ確実
片頭痛患者さんが頭痛が起こることが「ほぼ確実」と感じた場合には93%で頭痛が認められました。
この研究に参加した920名の片頭痛患者さんは予兆症状により1〜6時間後に起こるであろう頭痛を正確に予測できることが示されました。
この結果は、頭痛を予防するために予兆期の間に治療を開始することにより片頭痛を予防できるかもしれないという可能性を示唆しています。
過去の研究報告との比較
Eigenbrodtらの報告 | Schwedtらの報告(CaMEO) | Schwedtらの報告(PRODROME) | |
---|---|---|---|
光過敏 | 29% | (視力障害) 49.2% | 57% |
疲労感 | 49% | 32.5% | 50% |
頚部痛 | 46% | 51.2% | 42% |
音過敏 | 26% | 34% | |
思考困難 集中困難 | 30% | 39.6% | 30% |
めまい | 41.3% | 28% | |
イライラ | 37% | 36.4% | 26% |
吐き気 | 29% | 23% | |
あくび | 22% | ||
抑うつ | 19% | ||
食欲亢進 | 11% |
これまでの研究結果は概ね一致しており、これら予兆期の症状は片頭痛発作の初期段階に出現し、その後の頭痛を予測する上で有用と考えられます。
PRODROME試験
米国で実施されたカルシトニン関連遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であるウブロゲパント(Ubrogepant)の多施設共同研究です。予兆期におけるウブロゲパントの治療効果をプラセボ(偽薬)と比較評価した研究です。
予兆期におけるウブロゲパントの治療効果
- 24時間以内の中等度もしくは重度の頭痛
- 予兆後48時間以内の頭痛消失
- 24時間以上生活に支障がない
上記の全てでプラセボ群に比べてウブロゲパント群で有意な改善が認められました
予兆期にウブロゲパントを投与することで片頭痛の転機が改善することが示されました
片頭痛予兆期からの頭痛薬治療は有効か?
予兆を感じる人は多いけれど…
普段の診療でも、片頭痛を確実に予測できる患者さんは多く見かけられます。片頭痛は生活への支障度が高いため、予兆を感じた時点で鎮痛剤を使用する方も実際には多いです。ただし現時点では頭痛が起こる前の鎮痛剤の使用は推奨されておりません。
早期治療の危険性
予兆早期のウブロゲパント使用により頭痛が改善することが示されましたが、まだ小規模な研究です。予兆早期から頭痛薬治療を勧めるかどうかはこれから検討される課題です。
またこれらの報告の対象者は予兆の精度が高い片頭痛患者さんが集められており、片頭痛患者さん全員の予兆精度が高いとは限りません。誤った予兆の認識により頭痛薬を使用すれば頭痛薬の使用量が増え、薬物使用過多による頭痛を引き起こしかねません。
今後は予兆を認識することが重要となるかも!?
しかし、予兆の段階で片頭痛を止めることが出来れば、最も良い治療であることは間違いありません。今後も非常に期待される治療と言えるでしょう。すでにウブロゲパントで良い結果が得られたため、今後も予兆期からの治療に関する研究は進んでいくと考えられます。
予兆期からの治療が確立された場合に重要となるのは、当然ながら予兆をしっかりと認識できることです。現時点でも予兆の段階で『コーヒーを飲む』、『瞑想を行う』、『ヨガやストレッチを行う』などで片頭痛予防を行っている患者さんがいます。予兆を認識してもらうためには以下の2つが重要であり、やはり頭痛ダイアリーを活用することが最も有効です。
- 病状の認識:自分の予兆のパターンを認識できるようになる(個々人で予兆の症状は同じであることが多い)
- 記録の習慣化:予兆と頭痛発症の関連性を記録する
まずは片頭痛の予測精度を評価し、高めることが重要です。
現時点でも予兆期に行う非薬物療法により頭痛を軽減できる可能性があります。
当院は毎日頭痛専門外来をおこなっております。日曜日も診療を行なっておりますので、お気軽にご相談ください。