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片頭痛予防の新たな選択肢:スタチンによる予防的治療の可能性|頭痛外来 藤沢・辻堂・茅ヶ崎 辻堂脳神経・脊椎クリニック

片頭痛に悩む方のために、最新の予防的治療法として注目されているスタチンの可能性について、近年報告された複数の研究報告の結果を踏まえて総合的に説明します。

この記事の著者

辻堂脳神経・脊椎クリニック 院長

中川 祐

なかがわ ゆう

プロフィール

慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院、済生会横浜市東部病院、横浜市立市民病院、済生会宇都宮病院、足利赤十字病院、日野市立病院にて勤務後、辻堂脳神経・脊椎クリニックを開院。 脳神経外科専門医・指導医 脳神経血管内治療専門医

片頭痛の予防治療を行うかどうかは主に以下の3つの観点から判断されます。

01

日常生活への影響

片頭痛発作が日常生活に重大な影響を及ぼしている場合。発作によって仕事や学業、家庭生活などが妨げられる場合は予防療法を行うことが推奨されます。

02

高頻度の障害

片頭痛による障害が月に2日以上発生する場合、急性期の薬物療法だけでは十分な対応ができないことがあり、予防療法を行うことを検討する必要があります。

03

急性期治療の限界

急性期の薬物療法に十分な効果が見られない場合や薬の使用頻度が高い場合には予防療法が有効な選択肢となることがあります。

一般的な片頭痛予防薬

これらの薬剤を使用しても片頭痛予防効果が得られないこと、または不十分なことがあります。
そのため新たな選択肢としてコレステロールの治療薬であるスタチンが片頭痛予防に有効である可能性が示され、注目しています。

スタチンの基本的な薬理作用

コレステロール合成阻害

3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素を阻害し、コレステロール合成を抑制することで、悪玉コレステロールと呼ばれる血液中のLDLコレステロールを低下させます。

リポタンパク質調整

動脈硬化性疾患の危険因子として注目されているアポリポタンパク質B(ApoB)の分泌に影響を与えることでVLDLコレステロールを減少させます。これにより全体的な脂質プロファイルを改善します。

血管機能改善

血管内皮機能を改善し、血流を促進する作用があります。また血管壁の炎症を軽減することが判明しており、これが片頭痛の誘発に対して予防的に働く可能性があります。

抗炎症・抗酸化作用

慢性炎症と酸化ストレスは片頭痛の一因として知られており、スタチンの抗炎症作用と抗酸化作用は片頭痛の頻度や重症度を低下させる可能性があります。

臨床研究により認められたスタチンの片頭痛予防効果

スタチンの片頭痛予防に関する研究のうちランダム化比較試験(randomized controlled trail:RCT)という信頼性の高い試験について説明していきます。

スタチンとビタミンD3の併用療法;Buettnerらの研究(2015年)

  • スタチンとビタミンD3の24週間併用療法がプラセボ(偽薬)と比較された試験です
  • スタチン群では前半12週間で片頭痛が8日減少しました
  • スタチン群では後半12週間で片頭痛が9日減少しました
  • プラセボ群では片頭痛発作の増加傾向が見られました(減少しませんでした)
  • スタチン群の29%が片頭痛日数の50%以上の減少を達成しました

Buettner C, et al. Simvastatin and vitamin D for migraine prevention: A randomized controlled trial. Ann Neurol. 2015, 78, 970-981

スタチンはプラセボと比較して有意に片頭痛を減少させることが示されました

スタチンとバルプロ酸の比較;Hesamiらの研究(2018年)

  • スタチンと既存の予防薬でバルプロ酸の片頭痛予防効果を比較した試験です
  • 両薬剤とも片頭痛の頻度、強度、持続時間を有意に減少しました
  • 両薬剤ともに65%以上が片頭痛発作頻度の50%以上の減少を達成しました
  • 副作用の報告はバルプロ酸よりもスタチンの方が少なかったです

Hesami O, et al. Comparing the Effects of Atorvastatin With Sodium Valproate (Divalproex) on Frequency and Intensity of Frequent Migraine Headaches: A Double-blind Randomized Controlled Study. Clin Neuropharmacol. 2018, 41, 94-97

スタチンはバルプロ酸とほぼ同等の片頭痛予防効果が示されました

スタチンとバルプロ酸の併用療法の効果;Gangiらの研究(2021年)

  • バルプロ酸にスタチンもしくはプラセボを併用して比較を行った試験です
  • スタチンを追加すると発作頻度および頭痛の重症度が減少することが示されました

Ganji R, et al. Does atrovastation have augmentative effects with sodium valproate in prevention of migraine with aura attackes? A trpile-blind controlled clinical trial. J Pharm Health Care Sci. 2021, 7, 12

バルプロ酸と併用することで片頭痛予防効果が高まる結果となりました

スタチンとプロプラノロールの比較;Medeirosらの研究(2007年)

  • スタチンと既存の片頭痛予防薬であるプロプラノロールの片頭痛予防効果を比較した試験です
  • 片頭痛頻度が50%以上減少した割合を良治療で比較しました
  • プロプラノロール群で88%、スタチン群で83%と同等の効果が認められました
  • 副作用にも有意差はありませんでした

Medeiros FL, et al. Simvastatin for Migraine Prevention. Headache J Head Face Pain. 2007, 47, 855-856

スタチンはプロプラノールとほぼ同等の片頭痛予防効果が示されました

スタチンとプロプラノロールの併用療法の効果;Mazdehらの研究(2020年)

  • スタチンとプロプラノロールの併用療法をプロプラノロールのみの単独療法と比較した試験です
  • スタチンとプロプラノロール併用群では片頭痛発作が週1.00回に減少しました
  • プロプラノロール単独群では週2.53回あり、併用群と比較して有意に多い結果でした
  • 血中ビタミンD濃度が基準値以上な患者さんで、より発作が少なくなりました

Mazdeh M, et al. Effect of Propranolol with and without Rosuvastatin on Migraine Attacks: A Triple Blind Randomized Clinical Trial. Future Neurol. 2020, 15, 44

プロプラノロールと併用することで片頭痛予防効果が高まる結果が示されました

まとめ
  • スタチンはバルプロ酸およびプロプラノロールとほぼ同等の片頭痛予防効果が示されました
  • スタチンはバルプロ酸およびプロプラノロールと併用することで片頭痛予防効果がより高まる可能性が示されました

片頭痛とコレステロール代謝の関連性

01

脂質代謝異常

片頭痛の患者さんではLDLコレステロールや中性脂肪の増加を認めることが確認されています。これらの脂質代謝異常が片頭痛の病態生理に関与している可能性があります。

02

遺伝的要因

LDLコレステロール値の上昇に関連するHMG-CoA還元酵素の特定の遺伝子型が片頭痛リスクと関連することが示されています。HMG-CoA還元酵素の発現増加が片頭痛リスクを高めることが報告されており、HMG-CoA阻害作用を持つスタチンが有効な理由と考えられます。

03

血管機能への影響

コレステロール値の上昇は血管内皮機能障害や炎症反応を促進し、また酸化ストレスを増加させ片頭痛発作に関与する可能性があります。スタチンは抗炎症作用、抗酸化作用により片頭痛予防効果を発揮すると推測されています。

現時点でのスタチンによる片頭痛予防療法に対する評価

まずは補助療法として

現時点では片頭痛予防におけるスタチンの科学的な有効性は十分ではありません。さらなる研究報告がされるまではスタチン単独での治療は推奨されません。既存の予防薬の補助薬として使用することは考慮されますが、日本ではそもそも保険適応がありません

脂質異常症の評価を

脂質異常症があるにも関わらず未治療の片頭痛患者さんでは、現在の治療に加えてスタチンによる治療を行うことで心血管リスクを軽減しつつ、片頭痛予防効果を発揮してくれる可能性があります。あくまで脂質異常症に治療適応がある場合に保険適応となります。

ビタミンDも重要

血中ビタミンD濃度が低値であるとスタチンによる片頭痛予防効果が低下することが報告されています。そのためビタミンD濃度が低下しないように、ビタミンDを含む食品の摂取や適度な日光浴も重要です。

タイプ別のスタチン選択

前兆のない片頭痛と前兆のある片頭痛では効果的なスタチンの種類が異なる可能性が報告されています。スタチンを使用する場合には片頭痛タイプに応じてスタチンの種類選択を検討する必要もあると考えます。

中川 院長
中川 院長

片頭痛患者さんでは脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントや脳血管イベントのリスクが高いことが報告されています。片頭痛があり、かつ、心血管系イベントのリスクが高く、高コレステロール血症がある場合は、スタチンにより心血管イベントの予防を行うことで、副次的に片頭痛予防効果も得られる可能性があります。

スタチンには非常に多くの使用実績があり、新薬というわけではないため安全性が確立されていることも評価されます。

当院は毎日頭痛専門外来をおこなっております。日曜日も診療を行なっておりますので、お気軽にご相談ください。

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